職場で起こりやすいハラスメント~パワーハラスメント編~

職場で起こりやすいハラスメント~パワーハラスメント編~

近年、職場におけるパワーハラスメントへの対応は、企業にとって避けて通れない課題となっています。

改正労働施策総合推進法の施行により、すべての事業場に防止措置が義務付けられました。

本記事では、パワハラの定義や行為類型、企業に求められる具体的な対策について解説します。

目次

ハラスメントの定義

ハラスメントとは、相手に不快感を与える「いじめや嫌がらせ」によって、被害者の就業環境を悪化させる行為全般のことです。暴力などの身体的な行為だけでなく、暴言や無視といった精神的なダメージを与える行為もハラスメントにあたります。

ハラスメントはその原因によって様々な種類に分けられ、現在は数十種類以上のハラスメントが存在するといわれています。

職場とは

事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。

勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。

「職場」の例:出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)等

労働者とは

正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。

また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要がある。

パワハラの定義

「労働施策総合推進法」によると、職場ハラスメントには以下の3つの定義があるとされています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

もし、労働者が不満に思う指導であっても、業務に関わり適正な範囲の指導であればパワハラに該当しません。労働者個人からの訴えがあればすべて職場ハラスメントとなるわけではないのです。ハラスメントの相談があった場合、定義に照らし合わせ慎重に対応する必要があります。

パワハラに関する法律

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、通称「パワハラ防止法」または「労働施策総合推進法」といいます。この法律は、職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を企業に義務付けています。

労働施策総合推進法は改正され、2022年4月から従業員数に関わらず全ての事業場で、職場におけるパワーハラスメント防止のための措置が義務付けられました。

企業に義務付けさせた措置

  • ハラスメントに関する方針の明確化と周知・啓発
  • 行為者に対する厳正な対処の方針と規定の周知・啓発
  • 相談者・行為者のプライバシーの保護のための措置と周知
  • 不利益取扱いを禁止する旨を定め周知・啓発
  • 相談窓口の設置と周知
  • 相談対応の体制整備
  • 迅速な事実関係の確認
  • 被害者に対する配慮措置
  • 行為者に対する適正な措置
  • 再発防止措置

パワハラ行為類型

該当すると考えられる例 該当しないと考えられる例
過小な要求 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する。
過大な要求 長時間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる。
新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応ができないレベルの業績目標を課し達成できなかったことに対し厳しく叱責する。
労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる。
業務の繁忙期に、業務上の必要性から当該業務の担当者に、通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる。
人間関係からの切り離し 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し長時間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする。
一人の労働者に対して同僚が集団で無視をして職場で孤立させる。
・新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
・懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるため、一時的に別室で必要な研修を受けさせる
身体的な攻撃 ・殴打、足蹴りを行う
・相手に物を投げつける
・誤ってぶつかる
精神的な攻撃 ・人格を否定するような言動を行う
相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む
・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
・遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意する
・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意する
個の侵害 ・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する
・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行う
・労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報(左記)について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す

なぜパワハラは起こるのか?

個人要因

パワハラを正しく理解していない「無知」や、自分の行為がパワハラだと気づいていない「無自覚」が、パワハラの原因になるケースは珍しくありません。

個人の価値観は時代や地域によっても異なりますが、多くの人は「自分の考え方は普通だ」と無意識のうちに思い込んでいるためです。「無知」と「無自覚」が絡みあっているようなケースもあります。

組織風土に要因がある場合

日常的に強いストレスにさらされる過酷な労働環境であったり、ほかの企業・部署との関わりが少ない閉鎖的な環境であったりすると、パワハラが起こりやすい傾向にあります。

また、コミュニケーションが少ない職場では良好な人間関係が築きにくいため、パワハラが起こりやすくなります。特に企業トップの意識が低いと、パワハラはなかなか改善されません。

職場で起こりやすいハラスメント~パワーハラスメント編~

パワハラを予防するために企業がとるべき対策

  • 現状の把握
    アンケートなどを実施し、職場の現状を把握します。実名、匿名どちらで実施してもかまいませんが、正確に実態を把握するために、匿名で行うほうが良いかもしれません。

実は、すでに労働基準監督署や弁護士に相談をしに行っているという従業員がいた、という可能性もあります。毎年1~2回は、社内のハラスメントに関するアンケートを実施し、現状を把握しながら、前回と今回の結果の変化についても確認できるとよいでしょう。

  • 就業規則の改定
    就業規則や服務規程にハラスメントに関するルールを入れます。ハラスメントが発生した際は、行為者に対する処分も明確に定めておきます。また、その旨を従業員に周知することも大切なポイントです。
  • 相談窓口の設置と対応
    社内もしくは社外に相談窓口を設置し、利用方法やプライバシーは守られていること、相談者が不利益な扱いを受けないことなどを、従業員に対して周知します。

社内に相談窓口を設置しているが、実際には使われていない、社内でパワハラの噂は耳にするが相談窓口に連絡が来ないというケースが多々あります。

社内では相談がしにくいと感じる人が多いため、社外にも相談窓口を利用ができる環境を整えることが必要といえます。

  • リテラシー向上の取り組み

ハラスメント研修を行い、従業員一人ひとりがハラスメントの概念を理解し、適切な行動ができるよう教育する。ハラスメントの定義や、具体例、もしも発生してしまった場合の対応方法などを解説し、ハラスメントのない職場環境を目指します。

研修は、年1~2回定期的に実施し、従業員の意識改革を促す必要があります。

ハラスメントが発生した場合の対応

事実確認の確認

相談窓口や担当者への相談を受け付け、事実関係を迅速かつ正確に確認を行い、相談者、目撃者、加害者とされる相手方から事情を聴取し、証拠資料を収集します。

聴取の際は、プライバシー保護や不利益な取り扱いをしないことを説明し、安心して話せる環境を整えます。

収集した情報や証拠を基に、ハラスメントに該当するかどうかを判断します。

被害者への対応

ハラスメントの事実が確認された場合、被害者の状況を把握し、心身のケアやサポートを行います。

必要に応じて、行為者との接触を避けたり、勤務場所を変更したりするなどの措置を講じます。

被害者への配慮は、ハラスメントの再発防止にもつながります。

行為者への対応

ハラスメントが事実と確認された場合、加害者に対して適切な措置を講じます。

懲戒処分(減給、降格、出勤停止、懲戒解雇など)を検討する必要がある場合もあります。

処分を検討する際には、ハラスメントの内容、程度、頻度、被害結果、過去の事例などを考慮します。

行為者への指導や教育も重要です。

再発防止策の実施

ハラスメントの再発を防ぐため、研修や教育、相談窓口の周知や見直しなど、組織全体で改善策を実施します。

ハラスメントに関するルールやガイドラインを明確化し、従業員に周知徹底します。

相談しやすい環境を整備し、従業員が安心して相談できる体制を構築します。

まとめ

改正労働施策総合推進法の施行によって、従業員数に関わらず全事業場でパワハラ防止対策の取り組みが必須となりました。

適切なハラスメント対策を講じなければ、職場環境の悪化するだけでなく、経営の悪化にも繋がります。もし発生してしまった場合は企業の安全配慮義務違反に問われ、メンタル不調者の発生、企業イメージ悪化、訴訟などによる損害賠償などの金銭的負担が生じる可能性もあります。

社内でハラスメント対策を行っているが、不安がある、限界を感じている人事担当者の方。そもそもハラスメント対策って何からやればいいの?と思っている経営者の方。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。

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