PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、月経困難症は、決して珍しいものではなく、多くの女性が働きながら抱えている心身の不調です。しかし職場では、「個人的な体調の問題」「デリケートで触れづらい話題」として扱われ、十分な理解や配慮がされないままになっているケースも少なくありません。
一方で、これらの不調は集中力の低下や欠勤、感情の不安定さなど、仕事のパフォーマンスや人間関係に影響を及ぼすこともあるため、職場にとって無関係な話題ではありません。本人の努力や我慢だけに委ねてしまうことは、結果的に不調の長期化や離職リスクを高めてしまう可能性もあります。
本コラムでは、PMS・PMDD・月経困難症の基本的な理解を整理した上で、人事・管理職・経営者が職場で知っておきたい配慮の視点や、適切な向き合い方について解説します。
こんな症状ありませんか?
<身体症状>
- 乳房の張り・痛み
- 腹部の張り・ふくらむ感じ
- 頭痛
- 関節痛
- 筋肉痛
- 腰痛
- 手足のむくみ
- 体重増加
- 皮膚障害
<精神症状や行動の変化>
- 食欲の変化
- 過食
- 特定の食べ物に対する食欲増加
- 疲れ
- 無気力
- 意欲の減退
- 気分の変動
- いらだち
- 怒り
- 睡眠障害
- 落ち着かない
- 集中力の低下
- 社会からの引きこもり
- 抑制がきかない
- 通常の活動への意欲減退
- 孤独感
- 不安
- 気分の落ち込み
- 混乱
- 緊張
- 絶望感
月経前後にこれらの症状が一つでもある場合、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、月経困難症かもしれません。
月経前症候群(PMS)ってなに?
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの。
月経のある女性の約70~80%が月経前に何らかの症状がある状態。
過去3ヶ月以上連続して下記のようなPMSに見られる特有な症状がある場合は、PMSと診断される可能性があります。
特に不快な症状が現れることによって、日常生活や社会生活に悪影響を及ぼしている場合であれば、治療が必要な状態であるといえます。
精神神経症状
- 情緒不安定
- イライラ
- 抑うつ
- 不安
- 眠気
- 集中力の低下
- 睡眠障害
- のぼせ
- 食欲不振
- 過食
- めまい
- 倦怠感
身体的症状
- 腹痛
- 頭痛
- 腰痛
- むくみ
- げり
- 嘔吐
- お腹の張り
- 乳房の張り
PMSはなぜ起こる?
女性ホルモンが変動し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことがPMS大きな要因の1つと考えられている。脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスや生活習慣などの様々な影響を受けるため女性ホルモンだけが原因ではない。
PMSに影響する生活習慣
ストレス、喫煙、飲酒、睡眠不足、運動不足、食生活の乱れなどが影響している可能性もあります。
PMSの診断
PMSの症状が月経前に毎月現れ、月経開始後には和らぐことが特徴的。出現症状の記録から、月経周期との関連を確認し、症状の周期性があること、症状が似ているPMDDやうつ病など精神神経疾患、甲状腺や糖尿病・肝機能障害がないことを確認します。
PMSの治療
非薬物療法
- 症状日記をつけ病状を理解し把握することで対処しやすくする。
- PMSの症状と付き合うために、自分のリズムを知って気分転換やリラックスする時間をつくったり、自分が心地良いと思えるようなセルフケアを探す。
- カルシウムやマグネシウムを積極的に摂取し、カフェイン、アルコール、喫煙は控える。
- 症状が重い場合には、仕事の負担を減らすことが治療になる場合もある。
薬物療法
排卵抑制療法(排卵を抑える治療法)
低用量ピル(LEP製剤)を服用し、排卵を止め女性ホルモンの変動をなくすことで
症状を軽快させる。
対症療法(痛み止めの服用)
痛みやむくみ、精神症状等、症状に合わせた治療。
漢方療法
症状や体質に合わせた漢方薬を服用する。

月経前不快気分障害(PMDD)とは?
月経前に現れる症状の中でも精神症状が強く表れる状態がPMDDと言われています、
基本的にはPMSと同様に月経が始まると同時に症状は治まりますが、PMSよりも早く始まることもあり、特に、精神的な症状がより強いのが特徴です。
感情のコントロールが難しくなり、些細なことでも攻撃的になったり、暴力的になったりすることがあります。不安感や緊張感が強くなりすぎて、パニック発作を起こすこともあります。
このように不安感や焦燥感、抑うつ状態などの精神症状が強く現れるために、仕事や人間関係、日常生活において大きな支障をきたします。日本ではまだまだPMDDについて認知されていませんが、アメリカ精神医学会ではうつ病の一つであると認められており、国際的においてもうつ病の一種であるとしています。そのため海外ではPMDDの診断基準がはっきりしています。
PMDDの治療
PMDDの疑いがある場合には、精神科や心療内科など専門医に相談し、治療を行わねばなりません。PMDDの症状はさまざまですが、特に精神症状が顕著になり、感情をコントロールすることが難しくなります。職場においてトラブルを起こしたり、家族や友人と些細なことで喧嘩をしてしまうこともあります。
精神状態が不安定になるために、抑うつ症状や不安感、絶望感が強くなります。衝動的に自殺行為を起こすこともあります。
産婦人科の先生にPMDDと診断されることもありますが、PMDDはうつ病の一種ですので精神科や心療内科を紹介されたり、連携したりしながら治療することもあります。
PMDDの治療においてもPMSと同様に、カウンセリング(認知療法)や生活指導と共に、薬物療法が行われることが一般的です。PMDDでは脳内の神経伝達物資であるセロトニンの分泌量が減少しますので、セロトニンに作用するSSRIといった薬剤を用いられることが多くなりました。ほかにも症状の程度によっては、向精神薬や漢方薬を用いられることもあります。
月経困難症って?
月経の直前あるいは月経(生理)中に生じる下腹部痛や腰痛などの症状により、日常生活に支障をきたす状態。
他にも、疲労感、頭痛、悪心・嘔吐、めまいなどのからだの症状や、イライラや抑うつなどのこころの症状。
機能性月経困難症と器質性月経困難症に分けられます。
| 機能性月経困難症 | 器質性月経困難症 | |
| 年齢 | ・初経の2~3年後から現れます ・10代~20代に多く見られます |
・初経の数年以上経って現れます ・20代後半以降に多く見られます ・年齢が高くなるにつれて増えます |
| 症状 | ・痛みは周期的に感じられます ・月経の初日や2日目など出血量が多いとき に症状が強くなります |
・鈍い痛みなどの症状が月経数日前からはじまります ・月経中は症状が強くなります ・症状は月経後も数日続くことがあります |
| 原因 | ・プロスタグランジン※という物質が通常より多くつくられることで子宮が強く収縮し、下腹部痛などの痛みの症状が引き起こされると考えられています。 | ・子宮内膜症 ・子宮腺筋症 ・子宮筋腫 など 何かしらの病気を原因として起こります |
機能性月経困難症の治療
明らかな器質的病変が認められない月経困難症。対症療法や排卵抑制によってほとんどが治療可能。
薬物療法
排卵抑制療法(排卵を抑える治療法)
排卵を止め女性ホルモンの変動をなくすことで症状を軽快させる。低用量ピル(LEP製剤)を服用する。
対症療法(痛み止めの服用)
NSAID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)などで痛みを和らげる。
漢方療法
月経困難症の原因になり得る体の冷えや倦怠感を改善します。
また、下腹部の痛みが強い方にも有効で、骨盤の血行不良を改善し痛みを軽減します。
企業でできるPMS、PMDD、月経困難症の対策
企業で対策を行うには、研修で男女の理解を深め、制度・サポート体制を整備し、相談窓口を設けることが有効です。具体的には、女性の健康課題を周知する研修、生理休暇や有給休暇の適切な利用、低用量ピルに関する情報提供、そして婦人科検診やオンライン相談など、多様な働き方を認め、個々の状況に応じた柔軟な支援が求められます。
- 研修・教育の実施
月経やPMS、更年期症状、不妊治療など、女性特有の健康課題に対する正しい知識を、男性を含む従業員全員で共有します。
- 制度・サポート体制の整備
従業員が体調不良時に無理なく休暇を取得できるような制度(生理休暇、積立有給休暇など)を整備・周知します。
月経関連症状が強い場合、不妊治療中、子育て中でもキャリアアップや働き続けられるような多様な働き方を認めます。
婦人科検診の導入や、産業医、外部EAPカウンセラー、オンライン診療など、気軽に医療相談ができる環境を整備します。
- 相談窓口・環境整備
産業医や外部カウンセラーに、プライバシーが守られた環境で気軽に相談できる窓口を設けます。
企業公式ページなどで、女性の健康に関する情報や利用できる制度について、わかりやすく発信します。
制度を利用しやすい、困ったときに声を上げやすい、心理的な障壁を取り払った職場風土を醸成することが重要です。
当社では、女性特有の健康課題について研修の実施や、カウンセリングも行っております。社内で対策を行っているが、不安がある、何をしたらいいかわからないなどお悩みの人事担当者の方。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。

