従業員のメンタルヘルス不調は、休職や離職、生産性の低下だけでなく、企業の安全配慮義務やリスクマネジメントにも大きく関わる経営課題です。近年は健康経営への関心も高まり、多くの企業でメンタルヘルス対策が進められています。本記事では、企業が取り組むべきメンタルヘルス対策の目的や具体的な方法をわかりやすくご紹介します。
企業のメンタルヘルス対策が注目されるようになった背景
現在日本では、生涯約10人に1人が何かしらのメンタル不調になると言われており、企業でのメンタルヘルス対策が進んでいます。
企業がメンタルヘルス対策に力を入れる背景には、労働者のストレスや休職・退職の増加、精神疾患の労災請求件数の増加といった、労働安全衛生上の問題があります。これらを放置すると、企業の生産性低下、企業イメージの悪化、さらには法的責任や訴訟リスクにつながるため、従業員の心身の健康を保ち、安定した組織運営を実現することが求められています。
労働者のストレス増加
厚生労働省の調査では、多くの労働者が仕事や職業生活で強いストレスを感じており、精神障害を経験する人が増加しています。
休職・退職者の増加
メンタルヘルス不調による休業や退職が、企業内で頻繁に発生しており、人事管理上の課題となっています。
精神疾患の労災請求増加
仕事上のストレスが原因となる精神障害の労災補償請求件数は増加傾向にあり、企業は従業員の安全と健康への配慮が義務付けられています。
生産性の維持・向上
従業員のメンタルヘルスが良好に保たれることで、モチベーションや集中力が高まり、結果的に生産性の向上につながります。
リスクマネジメント
メンタルヘルス対策は、労災事故や訴訟リスク、ハラスメント問題を未然に防ぐための重要な経営リスク管理策です。
企業におけるメンタルヘルス対策の目的
従業員の心身の健康維持・増進、生産性の向上、離職・休職の防止、そして企業全体の健康経営と活性化です。具体的には、不調の未然防止(一次予防)、早期発見・対処(二次予防)、職場復帰支援(三次予防)を柱とし、従業員一人ひとりが健康で働き続けられる環境を整備することで、組織全体の健全な成長と持続可能性を高めることを目指します。
従業員の心身の健康維持・増進
従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、不調が発生した場合は早期に発見・対処することで、病気の深刻化や長期化を防ぎます。
また、従業員の心の健康状態を良好に保ち、幸福度を高めることで、より意欲的かつ活き活きと働ける環境を創出します。
生産性の向上
メンタルヘルスの不調による欠勤や作業効率の低下を防ぎ、組織全体の生産性を維持・向上させます。
そして、従業員が安定したパフォーマンスを発揮できる状態を保つことで、業務遂行の質を高めます。
離職・休職の防止
働きやすい環境とサポート体制を整備することで、従業員の会社への定着意欲を高め、離職や休職を減少させます。会社が従業員の健康をサポートしている姿勢を示すことで、従業員のモチベーションが向上し、エンゲージメントを高めます。
企業価値の向上とリスクマネジメント
従業員の健康を重視する企業として、求職者に対する魅力が増し、採用力の強化につながります。
雇用主としての安全配慮義務を果たすとともに、社会的責任(CSR)の一環として、企業価値や信頼性を高めます。
また、メンタルヘルス不調の悪化による業務遂行の支障が、企業側の安全配慮義務違反とみなされるリスクを軽減します。

取り組み例
ストレスチェックの活用
企業のストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止し、職場環境の改善につなげるための検査です。労働安全衛生法に基づき、従業員50人以上の事業場では年1回の実施が義務付けられており、高ストレス者への医師の面接指導の機会提供や、集団分析による職場環境の改善に取り組む必要があります。今後、50名未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務化となりますので、従業員数に関わらず、全事業場でストレスチェック実施の体制を整える必要があります。
産業医・保健師・外部EAPとの連携
産業医は健康管理の専門家として事業場の巡視や健康診断結果の評価を行い、保健師は具体的な相談対応や健康教育を実施します。一方、外部EAPは専門機関に委託することで従業員がより相談しやすく、企業はコストを抑えつつ専門的なカウンセリングなどのサービスを利用できます。これらの専門家が密に情報共有し協力することで、従業員のメンタルヘルス不調の予防と早期発見、そして適切な対応が可能になります。
外部と連携するメリットとしては、
産業医、保健師、精神保健福祉士、公認心理士などの外部EAPがそれぞれの専門性を活かすことで、メンタルヘルス不調の予防、早期発見、そして復職支援まで、従業員を多角的に支援できます。
従業員は、社内に相談しにくい悩みも外部EAPを利用することで安心して打ち明けることができ、心理的な負担を軽減できます。
また、専門家からの情報を共有し意見交換を行うことで、職場のコミュニケーション不足や過度な負担といった問題点を発見し、具体的な改善策を講じることができます。
サーベイ
月に1度程度、従業員に対して現在の体調や睡眠、食事は取れているか、人間関係について問題はあるかなどのアンケートなどを実施し現状を把握します。毎月実施することにより、本人の変化を確認することができ、異変があった際の早期発見につなげることができます。
教育研修の実施
メンタルヘルス不調への対応や支援方法について、関連スタッフの教育研修を行い、組織全体の意識とスキルを高めます。従業員がストレスやメンタル不調に対する正しい知識を身につけ、セルフケアや相互のサポートを通じて、心身の健康を維持・促進するために必要です。研修を行うことで、休職・退職者の削減、生産性向上、離職率低下に繋がり、長期的な組織の成長と健康経営の実現に貢献します。また、企業には安全配慮義務があり、従業員のメンタルヘルスケアは法的な義務であるため、研修の実施は不可欠です。
復職支援と再発防止策の整備
休業開始から復職後の定着までをサポートするプログラムを開発し、ストレスチェックの実施や職場環境の改善、定期的なフォローアップを継続することで、従業員の再発を防止し、企業価値の向上に繋がります。
休業中の従業員がスムーズに復職できるよう、復職までの流れ、支援内容、関係者の役割を定めたプログラムを作成し、就業規則等の規定を整備します。
また、従業員の状態に応じて、段階的な業務復帰や、業務量・内容の調整を検討することも必要です。
復職支援における窓口担当者を決め、人事、産業保健スタッフ、上司、従業員本人間で情報共有が円滑に行われる体制を構築します。
必要に応じて、外部リワーク支援機関を活用するのも効果的です。
専門の施設(リワークセンターなど)で、ストレス耐性の強化や生活リズムの改善を図るリワークプログラムを活用します。
復職後も定期的な面談やフォローアップを行い、従業員の状況と職場環境を継続的に確認・見直します。
まとめ
厚生労働省の調査によると、82.7%の労働者が強い不安・悩み・ストレスを感じていると回答。
ストレスの主な原因は「仕事の量・質(66.7%)」「対人関係(29.6%)」。となっています。
また、勤務問題を原因とする自殺の割合も増加傾向にあり、職場環境の改善が急務。
メンタル不調による休職は、平均5〜8ヶ月の労働損失につながるとされており、企業にとって大きな損失になってしまいます。
企業には、従業員に対して生命・身体・健康を守るために必要な配慮をする安全配慮義務というものがあります。これは単なるモラルではなく、労働契約法第5条に基づく明確な法的義務です。
健康配慮義務として、健康診断の実施やフォローアップはもちろんのこと、長時間労働の防止やメンタルヘルスへの配慮、ストレスチェックの実施や、カウンセリングや相談窓口の設置などを行い、早期発見をする体制が必要です。
また、職場環境配慮義務では、安全な労働環境が整えられているか、ハラスメント防止など快適な人間関係の構築が可能な職場作りが求められます。
これらは、従業員が安心して働ける環境を整えるための継続的な取り組みとして求められます。
レイジースタイルでは、メンタルヘルスやハラスメント対策、従業員面談、各種研修の実施を行っており、職場環境改善のサポートを総合的に行っております。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。

