「勇気を出して相談したのに、なぜか余計に苦しくなった」――
そんな声が、職場の中で見えないまま増えているかもしれません。
ハラスメント対策というと、加害行為そのものの防止や是正に意識が向きがちですが、実は企業リスクを大きく左右するのは”相談後の対応”です。被害を訴えた従業員に対し、不適切な対応や周囲の何気ない言動によって、さらに傷つけてしまう「セカンドハラスメント(二次被害)」は、近年深刻な課題として注目されています。
本来、相談は問題解決への第一歩であり、安心して声を上げられる環境こそが健全な組織の証です。しかし対応を誤れば、被害者の心理的負担を増大させるだけでなく、企業としての信頼性や安全配慮義務にも大きな影響を及ぼします。
特に人事や管理職にとっては、「守秘」「中立」「初動対応」といった基本が不十分であることが、意図せず二次被害を引き起こしてしまう要因となるケースも少なくありません。
本コラムでは、セカンドハラスメントの実態や発生メカニズムを整理したうえで、企業が押さえるべきリスクと具体的な予防策について、実務に落とし込める形で解説します。
1. なぜセカンドハラスメントが問題なのか
ハラスメント被害を勇気を持って相談したにもかかわらず、その後の企業の対応や周囲の言動が原因で、当人がさらに傷つけられてしまう――これが「セカンドハラスメント(二次被害)」です。
二次被害は、被害者のメンタル悪化(うつ・不安障害・PTSDなど)や離職・休職を招くだけでなく、企業の法的リスク、社会的信用、採用力、生産性にも直接的なダメージを与えます。一次被害を適切に扱えたかどうかよりも、相談後の初動とその後の対応の質が、職場の信頼を大きく左右します。
2. セカンドハラスメントとは?
定義:ハラスメント被害の相談・申告・通報の後に、企業や周囲の対応によって生じる二次的な不利益・精神的苦痛。
本来、相談は問題を是正するための第一歩ですが、対応の仕方が不適切だと、当事者の苦痛を拡大し、再度の損害を生みます。
具体例
- 「そんなことくらいで相談するな」「大袈裟だ」といった矮小化・非難
- 相談者の勤務配置・評価・昇進に不利益を与える報復行為
- 事実確認の名を借りて、繰り返し同じ内容を聞き続ける過度の聴取
- 加害疑い者や同僚からの孤立化・排除・噂の拡散
- 相談内容の不適切な共有(守秘義務違反)
- 「空気を読め」「我慢しろ」などの同調圧力・沈黙の文化の強要
3. なぜ起きる?原因と背景
- 知識・スキル不足:管理職・人事がハラスメント対応の基本(初動・記録・守秘・中立)の訓練を受けていない。
- 企業文化の問題:成果至上主義・我慢を美徳とする価値観・沈黙の同調圧力。
- 仕組み不備:相談窓口が形骸化、外部窓口がない、調査手順・役割分担・エスカレーションの明文化がない。
- 評価のインセンティブ設計の不備:短期成果だけを評価し、相談対応やクラリフィケーションにかかる労力を「非効率」とみなす。
- 守秘と公平の欠如:情報管理ルールが曖昧で、関係者の私見や感情が対応に反映される。
4. セカンドハラスメントが企業に与えるリスク
- 法的リスクの拡大:安全配慮義務違反、労働契約上の債務不履行、不法行為責任等の争点に発展。一次被害への不適切対応よりも、二次被害発生が損害賠償額・社会的批判を増幅させやすい。
- 離職・採用難:相談者本人の離職だけでなく、周囲の心理的安全性が崩れ、エンゲージメント低下・採用力低下に直結。
- 生産性低下:不信・噂・分断によりチームの協働が弱まり、意思決定やイノベーションが停滞。
- レピュテーション毀損:社外への情報拡散・メディア報道・SNS炎上により、取引やブランド価値にも影響。
5. 企業が取るべき予防策(実践ガイド)
(1) 相談窓口の整備 ― 社内+外部の二層構造
- 外部相談窓口(第三者):社内に言いにくい案件の受け皿。守秘・中立・専門性を担保。
- 社内窓口:人事・コンプライアンス部門。役割と限界、守秘・共有範囲を明文化。
- 受付から初動までの手順:受付→安全確保→事実確認の計画→関係者連絡→記録→フォローの流れを文書化。
(2) 管理職・人事の研修(ラインケアの質向上)
- 初動対応の5原則:傾聴・守秘・中立・迅速・記録。
- 不利益取扱い禁止の具体例の周知:評価・配置・研修機会・手当の扱い。
- セカンドハラスメントを生まない聞き取り技法:再トラウマ化防止、事実と評価の分離、質問設計。
(3) 調査の設計と記録の質
- 必要最小限のヒアリング回数、同席者の選定、質問票の事前作成。
- 記録様式の統一(日時・場所・出席者・発言の要旨・根拠資料・次回アクション)。
- 守秘義務の徹底:共有範囲を「必要な人だけ」に限定し、アクセス管理を行う。
(4) 事後フォローと再発防止
- 個別フォロー面談:相談者・関係当事者・管理職の三者に対し、それぞれのケアと行動契約を設定。
- 風土改善アクション:研修、チームルール再定義、1on1の定着、メンタルヘルスサーベイの定期実施。
- 効果測定:相談件数・再発率・エンゲージメント・離職率を指標化し、四半期単位で見直し。

6. すぐ使える「社内向け基本方針」サンプル(抜粋)
セカンドハラスメント防止方針(サンプル)
- 相談者への不利益取扱いを一切禁止する(評価・配置・職務・研修機会・手当)。
- 守秘義務を徹底し、情報共有は必要最小限とする。
- 初動対応は、傾聴・中立・迅速・記録を原則とし、過度な再聴取を避ける。
- 調査は、事前計画に基づき、適切な質問票と同席者で実施する。
- 事後フォロー(面談・職場環境調整)と再発防止策を必ず実施する。
- 相談窓口は社内・外部の二層構造を維持し、定期的に機能点検を行う。
7. まとめ
セカンドハラスメントは、「相談した人をさらに傷つける」二次被害であり、企業の安全配慮義務・生産性・人材定着・レピュテーションに大きなリスクをもたらします。
鍵となるのは、相談しやすい仕組みと中立・迅速・守秘の初動、そして事後フォローの継続。
レイジースタイルは、予防から事後支援まで伴走し、企業が安全配慮義務を果たしながら、安心して働ける職場づくりを実現します。社内でハラスメント対策を行っているが、不安がある、限界を感じている人事担当者の方や、そもそもハラスメント対策って何からやればいいの?と思っている経営者の方。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。

